【ドイツ語ニュース解説】2020年度ノルトライン=ヴェストファーレン州地方選挙(政治システム解説付)

最終更新: 9月16日

2020年9月13日(日)はノルトライン=ヴェストファーレン州地方選挙 Kommunalwahl NRW の投票日でした。コロナのため、不在者投票 Briefwahl(郵送投票)が20%とかなり多かったのですが、投票率 Wahlbeteiligung 自体はほぼ例年並みで、51.5%でした。

地方選挙は海外でニュースになることはほぼありません。国政選挙に比べて国際的な意味がほぼないからなのですが、とはいえ、ドイツでもっとも人口の多いノルトライン=ヴェストファーレン州の地方選挙は、1年後に控えている連邦議会選挙(総選挙)Bundestagswahl のトレンドを読む重要なバロメータと言われています。

ドイツの政治にあまり興味がないという方でも、ドイツ語を学習して、それなりのレベルになりたいと思っていらっしゃるのであれば、選挙関係の語彙をある程度は知っている必要があるので、語彙の勉強だと思って読んでいただければと思います。ドイツ語学習における Landeskunde 地域研究という分野ではこうした政治制度に関する知識も重視されます。


地方選挙 Kommunalwahl とは

まずは、そもそもの問題ですが、Kommunalwahlで選出されるものはどういうもので、政治的に見てどういうレベルなのかというシステムに関することをご紹介します。

下の図はドイツの政治システムをピラミッド型にして表現したものです。出典はドイツ語版ウィキペディアです。


Bund 連邦

頂点は Bund 連邦で、その長は Bundeskanzler/in 首相。Bundespräsident/in 大統領は代表・象徴的役割のみを担い、法案に対する拒否権をもちます。


Legislative 立法府は選挙で選ばれた議員から成る Bundestag 連邦議会と各州の代表から成る Bundesrat 連邦参議院、議会と参議院の調停を行う Vermittlungsausschuss 調停委員会および祖国防衛の際に連邦議会・参議院が招集できないときの緊急代理議会となる Gemeinsamer Ausschuss 合同委員会があります。

Exekutive 行政府は Bundeskanzler 首相と Bundesminister 連邦大臣および Bundesverwaltung 連邦行政局から成る Bundesregierung 連邦政府です。 Bundesländer 州

連邦の下に連邦に加盟している州が来ますが、州には Flächenländer 広域州と Stadtstaaten 都市州の2種類があります。グラフィックの右側の州レベルと市町村レベルを兼ねているのが Stadtstaaten です。ベルリン、ハンブルク、ブレーメンの3州が都市州です。

州レベルの Exekutive 行政機関は Landtag 州議会 または Abgeordnetenhaus 議院 (ベルリン)あるいは Bürgerschaft 市議会 (ハンブルク、ブレーメン)。

大きな広域州 Flächenländer(バーデン=ヴュルッテンブルク、バイエルン、ヘッセン、ノルトライン=ヴェストファーレン)では、州と市町村レベルの間に Regierungsbezirke 行政区レベルの Bezirksregierung 中級官庁が設置されています。この官庁の長官は Regierungspräsident です。

Städte, Kreise, Gemeinde 市、郡、自治体

その下に Kreisfreie Städte 郡独立市および Kreis または Landkreis 郡と Gemeinden 自治体が来ます。複数の自治体が集まって Gemeindeverband 市町村組合が形成される場合もあります。

Kommunale Ebene 市町村レベルの立法機関は Kreistag 郡議会、Stadtrat 市議会、Gemeinderat 町議会。 行政機関は Landrat 郡長、Oberbürgermeister 上級市長、 Bürgermeister 市長、Magistrat 市参事、Gemeindevorstand 町議長。

今回ご報告する地方選挙はこの一番下の、ピラミッドの図で茶色く塗られているレベルの選挙です。

下の写真はうちに来た選挙通知書 Wahlbenachrichtigung です。

1つではなく、3つあります。

最初のは、der Rat 市の評議会と die Bezirksvertretung 地区代表です。

2番目は der Oberbürgermeister/die Oberbürgermeisterin 上級市長の選出です。市長選に関しては、場合によっては Stichwahl 決選投票が9月27日に行われるとその下に書いてあります。

3番目は der Integrationsrat 統合評議会とボン市では呼ばれる外国人居住者の利益を地方政治に反映させるための諮問機関で、他の市では Ausländerbeirat と呼ばれることが多いです。これは、私がドイツ生まれではなく、外国出身でドイツに帰化したために、この評議会員を選ぶ権利が付与されていることによるものです。もともとドイツ人であるダンナの選挙通知書では、3番目にxがついていません。

ちなみに、帰化していない外国人居住者は、この外国人のための諮問機関・統合評議会の選挙のみ投票できます。

というわけで、私は全部で4枚の投票用紙 Stimmzettel に X をつけることになりました。下の写真はその投票用紙です。

投票は、自分の選びたい政党または候補者が印刷されている行の右側の〇の中にXをつけることで行います(ankreuzen / ein Kreuzchen machen)。日本の選挙のように政党名や候補者名を書かなくて済むので非常に楽です。政党名・候補者名を確認するファイルも不要です。その代わり、候補者を出す政党が多い場合は、投票用紙がとんでもなく長くなります。昨年の欧州議会選挙の時がそうでした。40ほどの政党がすべて印刷されていたので、長さ 1m 近かったのではないでしょうか。


地方選挙は誰が投票できるのか

一時期、難民も地方選挙で投票できるようになるとまことしやかなフェイクニュースが流れていたのですが、実際にドイツ国籍を持たなくても投票権があるのは EU-Ausländer と呼ばれる、欧州連合加盟国の国籍所有者のみです。それ以外の外国人には選挙権 Wahlrecht はありません。

そのことを簡単に示したのが下の図です。

ドイツ語上級者のために、この規定の法的根拠であるドイツ基本法第28条の原文を貼っておきます。

Art. 28 Abs. 1 GG: „Bei Wahlen in Kreisen und Gemeinden sind auch Personen, die die Staatsangehörigkeit eines Mitgliedstaates der Europäischen Gemeinschaft besitzen, nach Maßgabe von Recht der Europäischen Gemeinschaft wahlberechtigt und wählbar.“


投票可能な年齢は州によって違うのですが、ノルトライン=ヴェストファーレン州の地方選挙では、満16歳から投票できます。

州議会や連邦議会の選挙権・被選挙権(aktives und passives Wahlrecht)は満18歳からです。


投票結果

下のグラフは、州全体の各政党の得票率と、前回2014年に行われた選挙の時の得票率と比べた場合の変化を表しています。

最も得票率が高かったのは保守政党である CDU(Christlich-Demokratische Union Deutschlands キリスト教民主同盟)ですが、前期比マイナス3.2ポイントになっています。2番目の SPD(Sozialdemokratische Partei Deutschlands ドイツ社会民主党)はもっと得票率を下げていて、マイナス7.1ポイント、それに対して得票率を8.3ポイントも伸ばして、20%、3番目の勢力となったのは Bündnis 90 /Die Grünen(同盟90・緑の党)です。

FDP(Freie Demokratische Partei Deutschlands ドイツ自由民主党)はプラス0.8ポイントで得票率5.6%、近年外国人排斥など極右的勢力として物議を醸しだしている AfD(Alternative für Deutschland ドイツのための選択肢)は2.5ポイント伸びてますが、まだ5%程度です。Die Linke(左翼党または左派党)は、0.8ポイント下がって3.8%の得票率となりました。

大きなトレンドはやはり緑の党ですね。

特に16~24歳の若年層が緑の党に投票しており、その層だけで見ると33%の得票率です。


ボン市では、市長選は現職市長(Ashok-Alexander Sridharan)の得票率が34.46%で不十分であったため、Stichwahl 決選投票が対立候補である緑の党の Katja Dörner との間で行われることになりました。このため、9月27日にもう一度投票に行くことになりました。


投票先を決める際に重要だったテーマはなんだったかという統計では、緑の党が票を伸ばしていることからも推測できますが、Umwelt/Klima 環境問題が31%で最も大きくなっていました。次が、Wirtschaft 経済問題、28%、学校・教育が23%で3位に来ています。Einwanderung/Integration 移民・統合問題は21%、Verkehr/Stadtplanung 交通・都市計画が19%となっています。



司法府を含めたドイツの政治システムに興味のある方は、「ドイツ連邦共和国の政治システム」の方もチェックしてみてください。

また、ドイツの政党について興味のある方は、「Deutsche Parteien ドイツの政党」の方もチェックしてみてください。


動画版はこちら。


基礎単語リスト:

der Bund 連邦

das Bundesland/die Bundesländer 州

der Bundeskanzler/die Bundeskanzlerin 連邦首相

der Bundespräsident/die Bundespräsidentin 連邦大統領

der Bundesminister/die Bundesministerin 連邦大臣

der Bundestag 連邦議会

der Bundesrat 連邦参議院

die Bundesregierung 連邦政府

die Wahl 選挙

das Wahlrecht 選挙権

die Bundestagswahl 連邦議会選挙、総選挙

die Kommunalwahl 地方選挙

die Wahlbeteiligung 投票率

der (Stadt-)Rat (市)評議会

die Stichwahl 決選投票

der Oberbürgermeister/die Oberbürgermeisterin 上級市長

der Bürgermeister/die Bürgermeisterin 市長

die Umwelt 環境

die Wirtschaft 経済

die Schule 学校

die Bildung 教育

die Einwanderung 移住

die Integration 統合

der Verkehr 交通






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